樹木の学校89 「PiCUS TreeQineticによる引張り試験について」報告

2025年10月13日農大キャンパスにて樹木の学校89回を開催しました。今回は、樹木を伐倒・掘削することなく、その支持力や幹の強度を客観的に評価する「引張り試験(pulling test)」について、吉岡賢人樹木医より詳細な解説をいただきました。
- 引張り試験の概要とメカニズム この試験は「Elast-Inclino法」に基づき、樹木に微小な負荷(根元傾斜角度0.25°以内)をかけることで、その反応を計測する非破壊検査です。ひずみ計(Elastmeter)、傾斜計(Inclinometer)、載荷計(Forcemeter)の3つのセンサーを用い、風荷重に対する「根系の支持力」と「幹の破断強度」を同時に算出します。
- 科学的根拠に基づく安全率(Safety Factor)の算出 特筆すべきは、調査地の「基準風速」を考慮に入れた評価手法です。例えば、東京23区の基準風速(34m/s)を想定した際、その樹木が受ける風圧力に対し、どれだけの余力(安全率)があるかを数値化します。これにより、「見た目は健全だが根返りのリスクがある」といった、目視では困難な判断を1.5(安全)や1.0未満(リスクあり)といった明確な指標で示すことが可能です。
- 現場での活用と今後の展望 胸高直径20cm以上の樹木が対象となり、精密診断が必要な街路樹や貴重な古木などの保全において、極めて有効なツールとなります。主観に頼らない「数値の裏付け」がある診断は、発注者や市民への説得力を高めるだけでなく、適切な管理時期の決定にも大きく寄与すると感じました。
最新の診断機器の特性を理解し、いかに現場の判断に活かしていくか。樹木医としての知見をアップデートする貴重な学びとなりました。


