第88回 樹木の学校 報告

「神宮外苑イチョウ並木の診断と根系調査、そして未来への保全対策」

2025年8月31日農大キャンパスにて樹木の学校88回を開催しました。今回は、東京の象徴である「神宮外苑イチョウ並木」を次世代へつなぐための、極めて精密な調査データと具体的な保護対策が共有されました 。講師は本会理事の直木哲樹木医です。

1. 根系調査と新球場建設の影響検証 新球場の建設予定地とイチョウ並木の距離(離隔)が議論となる中、徹底した現場調査が実施されました。当初の「縁石から8m離隔」という計画に対し、第1回調査で6.5mラインを越えて多くの根が伸びていることが判明 。これを受け、第2回調査ではさらに西側の10.5m付近まで掘削を行い、根系の広がりを詳細に数値化しました 。その結果、球場の位置を当初計画よりさらに約18.3m後退させるなど、根系への影響を最小限に抑える設計変更のプロセスが示されました

2. 樹勢衰退の原因究明と「治療」の実践 一部で見られる褐変や早期落葉に対し、都市環境のストレス、西日、土壌硬度、ヘデラ(ツタ)との競合など、多角的な原因分析が行われました 。これに対し、水圧穿孔による土壌改良、ヘデラの除去、稲わらマルチ(写真👆による乾燥防止、自動灌水設備の設置といった重層的な対策がすでに実施されています 。

3. デンドロメーターによる科学的モニタリング 樹木医の「主観」に頼らない評価手法として、幹の肥大・収縮を10分間隔で計測する「デンドロメーター」の活用が紹介されました 。健全樹と衰退樹の成長比をグラフ化して客観的に比較することで、行われた対策がどれほど効果を発揮しているかを科学的に検証する試みは、今後の樹木保護のモデルケースとなるものです 。技術と熱意が詰まった、非常に濃密な学びの機会となりました。